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週刊Neue Fahne

2025年12月08日号

“属人化思考”という罠-1-管理職が貫く基本姿勢

 属人化の問題は単なる「業務の非効率」や「引き継ぎの難しさ」といった技術的課題にとどまらない。むしろ組織文化、価値観、マネジメントの在り方そのものに根を持つ構造的課題である。管理職としてまず自覚すべきは、属人化とは“特定の誰かが悪い”という話ではなく、“特定の誰かに依存させてしまう組織の設計・運用の問題”だという点だ。

 従って、管理職の第一の姿勢は「個人ではなく業務を軸に物事を捉える」ことである。これは“人に仕事を与えるのではなく、仕事に人を当てはめる”という古典的かつ普遍的な原則を徹底する姿勢でもある。

 業務は本来、組織の資産である。特定の個人に紐づいたまま放置されれば、担当者が不在になった瞬間に機能停止を招く。にもかかわらず、「この仕事は自分にしかできない」という抱え込み型の思考が放置される職場では、属人化は必然的に生まれる。

 管理職が取るべき態度は、こうした“個人が価値を独占する構図”を肯定しないことである。仕事そのものの標準化、手順の明確化、業務構造の整理を通し、価値がプロセスに紐づく状態をつくり出すことが求められる。

 管理職は属人化の心理的背景についても理解する必要がある。属人化の背後には、承認欲求、ナルシシズム、評価への恐れ、役割が奪われる不安といった人間の根源的感情が存在する。特にベテラン社員ほど、自身のノウハウを独占しがちで、後進育成に消極的になりやすい。
 これを道徳論で裁いても意味がない。管理職は、業務を共有しても本人の価値が損なわれない制度や評価の仕組み、心理的安全性の高い対話環境を整える必要がある。働く個人が“手放すことで評価が下がるのではないか”という恐怖から自由になるとき、初めて属人化は組織的に解消へ向かう。

 管理職自身が実は最も属人化思考に陥りやすい。特に40代前後のミドル層は、プレイヤーとしてのピークを超え、マネジャーとして組織を牽引する役割への移行期にある。

 ここで陥りやすいのが「自分がやった方が早い」という発想だ。短期的には効率が良いように見えても、長期的には部下の育成を阻害し、自分自身の過剰労働を正当化する罠になる。管理職に求められるのは“自分が動く”ことではなく“仕組みと人を動かす”ことである。

 属人化を解消するための基本姿勢として、管理職は次の三点を徹底しなければならない。
1.業務の透明化と構造化を最優先する。手順、判断基準、必要データなどを明文化し、個人の記憶や暗黙知に頼らない状態をつくる。
2.部下の成長のために手放す勇気を持つ。権限移譲は育成そのものであり、チームの生産性向上の前提条件である。
3.個人の努力よりもプロセスの合理性を評価する。汗をかくことを善としない。付加価値に結びつかないルーティンは徹底して簡素化・標準化する。

 管理職の役割は、業務の属人化に苛立つことではなく、属人化が起こらない設計を実装することである。属人化思考を排し、プロセスと仕組みを軸にした組織運営へシフトする姿勢こそが、現代のミドルマネジメントに求められる根本姿勢といえる。

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