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週刊Neue Fahne

2024年03月11日号

人口オーナス(負担)期の日本社会-4-必要なのは変化対応のポジティブ思考

人口ボーナス期には人口が増加し、生産年齢人口が多くなるため様々な市場が拡大する。一方でビジネスモデルは必然的に画一化していく。企業は極端にいえば拡大する市場に向けて大量の商品を提供することが求められる。現実的に大量の商品供給が可能な企業が拡大し市場で隆盛を極めてきた。「何もしなくとも良かった」とまでいわないが、作れば売れた時代でもある。日本ではこれに加えて働き方も画一化した。
 画一的なものを市場に大量に供給することが求められた企業は、同じ条件で働くことのできる労働者を揃え、画一的に働くことを求めた。これは効率的であり当然の帰結である。そして、この労働力の水準を均一化させることも必要であった。これを受ける形で日本の高度経済成長期の教育制度も、画一的に働くことのできる労働力を育成することが課題となった。

  人口オーナス期に入ったこれからの日本社会に必要なことは、これまでの人口増加時代に極めて都合のよく機能していた社会システムを働き方と働かせ方を含めた大きく転換させることである。これまで生産性を維持することができていたビジネスモデルは、画一的に働くことができる労働者による効率的な働きに規定されていた。しかし、消費の成熟した人口減少社会では成立しない。必要となるのは商品・サービスの差別化のためにいかに付加価値のある働きをしていくのかである。
  しかし、残念ながら今日の日本企業において中核世代を形成している40代〜50代の多くの者にとっては、この種の事柄について危機感を含めて意識化がなされていない。そして意識化されていない者達による危機感なく、無警戒に職場で繰り広げられる行為が“昭和的サラリーマンの働き方”などとマスコミからディスられている。はたまた「働かないオジサン問題」などと嘲笑の対象とされている。

  今日多くの大企業で始まっているのは、この世代に対しての早期退職の促しである。この早期退職の動きは業績の善し悪しとは関係がない。業績の良い企業であろうが一定の世代に対する早期退職を実施する流れは、人口ボーナス期に培われた意識残滓のある世代に引導を渡しているようなものである。強調されるようになった個々人へのリスキリングの重要性の強調するなどの流れもこの文脈で捉えておかなければならない。
  要するに“もはやこれまでの働き方の延長線上にポジションやポストなど存在しない”という現実を全ての働く者達に対して陰に陽に諭しているに過ぎないといえる。今後の人口オーナス期において経済の成長をそれなりに維持していくためには、外国人労働力も含めた多様な人材を活用し、労働市場にこれまで労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)が低かった層を反映させていく必要がある。

 人口オーナス期に入った日本で今後ますます様々な課題が出てくる。何よりも一定の成長率を維持しなければ年金をはじめとする社会保障制度の水準維持も怪しくなる。しかし、これは単に政府や企業の問題だけではなく、一人ひとりの働きにおいてもいえる。リスクヘッジばかりを思考せず、一定のリスクテイクをして未来を能動的に迎え入れていく気構えが必要となる。
  未来は予測不能でありビジネスには絶対的な正解は存在していない。誰にとっても予測不能で不確実な未来をネガティブに捉えるならば思考は停止状態になる。僅かと思われる変化であっても自分に有意に転化する可能性を見極めることが大きなチャンスにつながるというポジティブ思考が必要だ。

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