2011年12月19日号
採用現場でありがちなケースだが、自社にとって必要なビジネスパーソンとしての要件を満たしているか否かという問題と出身大学とは本来関係ないはずなのに、有名大学を卒業しているという理由で「この人物は優れているはずだ」と思いこんで採用してしまう…。
このように人は他人を評価するときに、評価する対象者の目立ちやすい特長や一つの優れた側面に引きずられて、全体的で総合的な評価が歪められてしまうことがある。こうした現象は「ハロー効果」(光背効果、後光効果)と呼と呼ばれている。
仕事の現場ではこの「ハロー効果」に注意していなければ、自分の仕事ぶりと同僚や後輩の仕事ぶりを客観的に見比べることができなくなる。自分にはない能力を持っている者に対する過度な評価。逆に自分には簡単なことでも上手く出来ない者に対する過度な過小評価。つねにこうした評価の歪みを発生させてしまう危険性を自覚しておく必要がある。
一言でいえばひとは自分基準で他人を判断しがちだ。しかし、会社組織では特殊な専門性が求められている部門を除いて、同僚・後輩、上司との協働なくして成果を生み出していくことはできない。自分の同僚にミスは少ないがマイペースでしか仕事ができないタイプがいたとしたら、どう評価をくだすだろうか。もちろん、仕事を遂行する上で必要な基本的な対人関係能力を有していない、ある意味での「発達障害」の人びとが存在しているのも事実だ。こうした人びとに対する対応はよほどの余裕のある会社組織でなければ対応が不可能であることも事実だ。
「あいつは仕事が遅くてダメだ」とマイナスの判断をするか。それとも「仕事は遅いが、確実にこなす」と考えるか。ひとは自分と同じ行動特性を持っている者や、同じものの考え方をする者に好意を持ち、理解を示しがちだ。こうした傾向は、ある意味当然でもあるが、自分と同じタイプの者ばかりを評価し、自分と異なる特性を持った者を排除し始めたならば組織は成立しなくなる。
しかし、自分と意気投合する者以外を排除したりし始める。そして行くつく先は組織の「派閥化」を招くことにもなってしまう。当然、組織の活性化は損なわれ活力が失われてしまう。さらに、自分の基準だけで同僚・後輩の仕事ぶりや行動を判断してしまうと、自分自身の思考の幅を狭めてしまうことになる。同じ思考パターン同士が集まった組織は、一見するとまとまりがよく見える。また、阿吽の呼吸の雰囲気にもなる。
本来、組織とは自分と異なる考えを持っている者同士が、違いを尊重しつつ意見をぶつけ合い新たな方向を見出すことで、既成の枠にとらわれない新たな発想が生まれるものだ。
自分の基準に囚われず、組織内の異質な個性を評価できる姿勢を持つことが、自分のみならず組織全体のモチベーションアップにつながる。
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