2020年06月08日号
社会変化に規定される経営環境の変化は企業規模に関わりなく、すべての企業に等しく影響を与える。とりわけ新型コロナウイルスによる社会の日常的営みの変化を前にするならば、「未知との遭遇」であるかのように社会全体が“立ち竦み状態”に陥る場合もある。しかし、経営環境への変化対応の必要性という視点に立つならば、ある意味で“来るべきして来た変化”と捉えることも必要だ。
要は不確実で混沌として変化の時代には、「自分の仕事は今まで通りを繰り返すことだ…」という発想は通用しない。変化の只中で従来の慣習に胡坐をかいていては、“自分の仕事の存在理由さえも見失ってしまうという”という捉え方に徹することができるか否かが問われている。
経営環境の変化が自らの仕事や働きにどのような変化をもたらすのか。これは個別企業をはじめ個々の働き手によって、その影響度に差が生じてくるものだ。しかし、一ついえることがある。それは「今日はあらゆるビジネスの世界、あらゆる仕事の場面でスピードが要求される」ということだ。個人に則していうならば「仕事のスピードをあげる」とは、個々の事象に対する自分自身の判断を含め、仕事のやり方を変えることに直結する。
自分自身で判断しようとせず、細かいことまでいちいち上司やトップの指示を仰いだりしていては、日々に変化していく顧客の要望や市場の変化に対応できない。これは「独断専行」を是認するという意味ではない。自分に与えられた条件と自分に与えられている権限を最大限に活用して、自分のパフォーマンスの質を高めていくことである。別の表現を用いるならば、自らの仕事に対して主体的に向き合うということだ。
経営環境の激変が想定できない時代では、「自分のパフォーマンスの質を高める」という意識を持ち続けることが必須となる。さもなければ、企業組織の目的・目標に沿って自主的に判断し、行動するべき場面で躊躇することになる。ただし、企業組織の中で自分が自主的に働くためには、まず自分が所属している企業組織の存在理由・目的を以下の視点からしっかりと捉え返すことが前提になる。
・自分の属している企業組織は、何のために世の中に存在しているのか。
・企業組織の一員としての自分の果たすべき役割は何なのか。
・自分が行っている仕事には何の意味があるのか。
・自分の仕事は世の中に対してどのような価値を提供しているのか。
日常の業務行動が多忙であればこそ、機会あるごとにこうした本質的なことを自分への問いかけとして繰り返しておく必要がある。現在の先行きが不透明な時代には、組織の方向性とそこにおける自分の立ち位置をハッキリさせておくことだ。さもなければ、自分の仕事は“単に「惰性」で行っているだけ”ということになる。
自分自身が組織の方向性について、周りの同僚や後輩、そして時には上司も巻き込んで、経営理念、社是・社訓、あるいは部門ごとの任務などを通して常に反芻していくことだ。経営環境の変化に対して思考停止に陥ってはならない。全ての企業人は組織が目指す方向やビジョンを明確にし、仕事の意味や価値を追求して組織の強みを発揮する行動を追求し続けることを自らのモチベーションの源泉としなければならない。
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