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週刊Neue Fahne

2018年11月05日号

労働力不足でも雇用調整が同時に進む現実を直視する

日本ではこれまで職務や仕事内容ではなく、「どこの企業に勤めているか」が重視されてきた。これは就職先企業によってあたかも就労者の価値が決まるかのような錯覚を生み出してきた。この傾向は最近の「就職ルール」の廃止論議の端々にも顔をもたげ、日経連の去就によって自分の就職が左右されるかのような錯覚に陥っている。むしろこの傾向は、就活生以上に学校の側に強いかもしれない。大手企業からの内定がでる可能性が乏しい学生が、採用意欲のある中小企業やベンチャー企業には見向きもせず、世に知られたブランド企業への就職希望が集中し、結果的に無為に時間を費やし就職活動に疲弊する。
  一言でいえば企業に入社し“そこで自分は何をやるのか”ということより、企業の持つブランドイメージに重点が置かれているということだ。しかし、これは就活学生の意識を批判する以前に社会全体に蔓延してきた“有名企業は成長してきた歴史があり、安定しているように見えるので、将来も泰であると思われる”という思い込みを反映しているのであり、決して学生たちを嗤うことはできない。誤解を恐れずに直截にいえば、学生たちに大企業に暗黙裡に存在している指定校という現実を直視させない大学側の姿勢は罪でさえある。

  今日の経営環境は大きく変化している。「企業の将来性」を判断する基準などもあいまい化している。現時点でそのように思われている企業に入社したとしても、自分が定年に至るまで企業が存在しているとは限らない。仮に存在したとしてもM&A等で資本関係に変化が生じたりもする。さらには、一定の年齢に達した段階を過ぎ雇用調整の対象になる可能性もある。そもそも現時点でのブランド名や商品力、売上規模が高い企業が不易であるはずもないことは自明である。
  これは、日本のこれまでの花形産業が石炭、砂糖、セメント、肥料に始まり、その後、紡績、石油化学、造船、電機に代わり、いま金融や情報通信へと変遷をしていることだけとっても明らかだ。まして怪しげな格付けなどで将来の優劣が決まるわけではなく、マスコミ等で「優良」と喧伝された企業が一夜のうちに凋落するという事態が日常的とさえなっている。どのような企業組織でも今後とも安泰であるなどという保証は、存在していない。これから就職活動を展開する学生たちに向かって、この種の現実をはっきりと理解させていくことが極めて重要である。

  これから企業組織に参加してくる学生ならばまだしも、困ったことにこの現実を直視できないでいる多くの既存社員の存在こそ企業にとっては大問題である。何故ならば、現実を直視しない既存社員に限って、自らの働き方を顧みることなく過去を踏襲し企業組織に安住してしまっているからだ。
  営業職、経理職、人事・総務職、あるいは生産現場での技能など全ての就労現場において既存社員に求められるのは、職務能力において自分がどのレベルに位置しているのかを見極める力である。企業は自らの業務遂行に対して客観的な判断基準を自分自身で持っていない者に対しては、どんなに労働力不足が叫ばれようとも仕事を保証することができない。つまり、労働力不足と雇用調整は同時並行に進むことになる。

  自分の働きで通用するのは、出身学校や前職での経歴・肩書ではない。武器となるのは、企業組織において自らの頭で考え、自らの判断基準で行動し、組織全体に貢献していくことができるという能力だけである。単に企業組織に在籍していることへの満足は、文字通り“就社”意識から一歩も出ないということだ。
  こうした意識に浸っていては必然的に「会社が○○をしてくれない」という愚痴を繰り返す「困った人材」に転化する。そこで周りから認められるためには、企業組織という枠を超えて仕事での自分の行動規範をつくりだす気概を持つことが重要になる。

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