2018年01月15日号
企業組織においては組織と個人のベクトルが合致することが重要である。このためには一人ひとりの働きにたいする「手ごたえ」や「やりがい」が実感できることが前提だ。ところが、往々にして組織内には不満や不平が潜在的に存在しているものだ。
また、いつしか周りからは「何をやっているかわからない者」が拡大してしまう危険性もある。不満や不平が顕在化するならば対処の仕方があるが、深層に澱んでいる不満や不平は質が悪い。特に組織構成や組織人員も拡大し分業化が進んでくるとこの傾向が強くなる。
組織内に不満や不平が蓄積してくると組織内には、『出る杭は打たれる』という意識も蔓延し始め、「何事も周囲から突出せずに人並みにしていれば無難に過ごせる」という風潮が生まれ始めてくる。こうした風潮がいつしか「組織ぶら下がり現象」として組織行動に表れる。そして知らぬ間に組織風土化する危険がある。
これはある意味で組織の宿悪でもあり、定期的な組織浄化が必要ともなる。さもなければ悪しき組織風土が澱のごとく固まり、機能不全を発生させることになる。これは組織の“成長に伴う病”でもある。
組織の“成長に伴う病”の症状は、単純化するならば次のような事柄が散見されることだ。
・上・下や部門ごとの組織体制が固まってしまい横断的交流が少なくなる。
・新しい試みや行動を思考し展開する人が歓迎されなくなる。
・従来からの慣習やスタイルが絶対視されて、一人ひとりの社員の間に「前例踏襲主義」がはびこりはじめる。
・誰もが周囲と同じペースで、同じような行動を取り始め、部門や個人の間に「横並主義」が生まれて活性化が失われていく。
・自分で物事を解決するのではなく、常に他者に頼り、叶わなければ他人の責任に転嫁する。
つまり、現象的には「ぶら下がり」という「組織依存」意識であり、結果的に周囲のことばかりを気にした仕事ぶりとなり、「責任転嫁」にもつながる。組織への「依存意識」と「責任転嫁」は表裏の関係にあり、組織への「依存意識」が強い者は、その反動として組織へ「責任転嫁」を始めるのが常だ。
「組織依存」のあらわれ方は様々だが、“自分は上司の指示に従うだけ”“責任ある仕事はしたくないし、自分だけが一所懸命になるのはバカバカしい”“自分から行動しなくともそのうち何とかなるだろう。また、先送りしていれば、そのうち誰も何も言わなくなる”という心理構造だ。一言でいえば“今のままでも組織は潰れない”という意識だ。
現場マネジメントは何よりも「自己の成長に対する責任は、常に自分自身が負うものである」という意識を鼓舞しなければならない。責任とは自分の行為・行動を自分で自由に選択して、その結果として起ったこと全てに法的および道徳的な対応を行うことである。自分自身が組織に埋没した働き方に終始していると、自明の「責任」概念が薄れてくるものである。
そこで、管理職は日常的に自らの「働き方」の結果につい“最大の責任を持つのは本人であり、会社組織ではない”ということを強調し続けなければならない。同時に与えられた条件と環境の下で自らが最善の行動を行っている者は、組織に対して建設的な問題提起を行うことができるものであるという信念を持つことも重要だ。仕事上での失敗も同様で失敗が生じた原因の所在と自らの「責任」から“逃げない”という規範作りが必要となる。
現場マネジメントは“自分からは「何もしない」という姿勢が組織に蔓延し始めたならば、組織は死に体となる”ことを何よりも恐れなければならない。
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