2016年07月04日号
管理職の役割は自分自身が頑張ることではない。部下を上手に使って部下に仕事を任せることも役割の一つだ。「仕事が出来る」と自負をする管理職に限って、部下に仕事を与えず自分で抱え込む傾向がある。
しかし、この姿勢はマネジメントを理解していないことになる。限られた経営資源である部下の力を最大限に活用して組織全体で成果を生み出していかなければ、管理職の役割を果たすことにはならない。管理職が率先垂範で物事に対処するという意味は、決して仕事を自分が抱え込むということではない。
管理職が部下に仕事を与えるとは、自分で手が回らない業務を部下に振り向けるという意味ではない。この姿勢は単に部下を自分の補助要員と位置づけることにもなり、部下の成長には結びつかない。あくまでも部下を成長させていくために計画的に段階を追いながら仕事を与え続けることが重要である。ただし、注意すべき点は、定量で同じ内容の仕事を定期的に与えてはならないということだ。定量で同じ質の仕事を部下に与え続けるならば、部下の能力は決して向上することはない。また、成長が一定の段階で止まるだけではなく業務の属人化を招くことにもなる。
定量で同じ質の仕事に従事する部下は、何時しか仕事に慣れを抱き必然的に仕事の中身は薄くなるものである。手慣れた仕事に従事し始めると余計なことに時間を割き始める。さらに作業と仕事の区別をつけずに屋上屋のことを仕事と勘違いすることにもなる。“必要のない資料を読んだり、作らなくてもよい統計資料の作成に時間をかけたり、意味もなく外回りを始める”という具合だ。
「計画的に段階を追いながら仕事を与える」とは、部下に“時間の余裕を持たせて仕事を与える”ということでもない。時には部下にとって負荷がかかるスピードを設定することも必要だ。さもなければ「自分は一所懸命やっている」という姿勢をアピールするために、期待するアウトプットから外れた業務に精を出す者もあらわれる。
こうした者に限って本人は「自分は忙しい」と思い込み、結果的にまとまりがなく過剰な内容になる場合が多い。さらにいえば不必要な長時間労働を許すことにもなる。そこで、管理職が部下に仕事を与える場合に必要となるのが、時間の制約を設定してアウトプットを明確にした指示である。
一般的に言い尽くされてきたことだが、忙しいふりをしているのではなく、“本当に忙しい部下”ほど、仕事のレベルやパフォーマンスも高いものだ。こうした部下は多様な仕事を展開することでさらに成長していく。管理職は部下の忙しさが本物かどうかを常に見極めることが必要となる。管理職は職場全体の仕事配分を考えすぎると、「彼は忙しいから」と遠慮して、忙しくない部下に重要な仕事を割り振ってしまうことにもなる。
しかし、部下の状況を見極めることなく一律に仕事を与えるならば、本来パフォーマンスの高い部下の成長も止まることになる。部下を育てるためには“忙しい部下”にこそ重要で急いでいる仕事を与えることだ。重要度と緊急性が低く時間的に余裕のある仕事は、“忙しくない部下”にやらせるのが、仕事の与え方のコツである。“忙しい部下”にこそ、重要な仕事を次々に与え、さらに力を伸ばしていくことだ。管理職にとって部下育成に平等意識は不要だ。
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