2014年08月25日号
組織は会社に限らずある達成目的の下に個々が集まった集団だ。従って、全員が同じ役割を演じるわけではない。組織を構成する一人ひとりに個別の役割が存在しているものだ。ところが、一人ひとりが自分の役割をしっかり自覚しているかというと、そうではない。
そのため、主語を「自分」ないし「私」ではなく、「みんなが」という具合に曖昧ましてしまう傾向も生まれる。また、組織体が大きくなればなるほど周囲から「個の役割」が見えにくくなる。その結果、自分が単に「組織に属している」だけで、役割を果たしているかのような錯覚を持ち始める。
こうした状況の下では「自分の役割」という意識よりも、自分に「割り当てられた役割」と感じ始めるものだ。たとえば、A部門の者に「あなたの役割はなんですか」と訊ねると、往々にして「私の役割はA部門です」という答えが返ってきたりする。
この種の答えはあたかも、A部門のメンバーであることが自分の役割であると錯覚し、A部門において自分が「何をやるのか」という意識が希薄になっているということだ。つまり、一人ひとりが自分の果たすべき役割に無自覚になっているということだ。
現実問題としておなじA部門であったとしても、担当している事柄は他者とまったく同じではない。当然経歴や経験年数の違いでそれぞれの役割に違いが発生する。
そこで、管理職はまず部下一人ひとりの役割を明確に設定していく必要がある。これは部下を「役割意識で行動させる」ということでもある。人間はそれぞれ自分が担う役割に対しての成功・失敗経験で成長するものだ。もちろん単純な成功・失敗の繰り返しの数が問題ではない。あくまでも実践での成功・失敗体験に対する自分なりの分析・チェックや他者からの評価などが重なりながら成長していく。
個々人によって成功・失敗の質は異なるはずである。そのため、管理職は部下に役割認識をしっかりと持たせ、その役割を全うしていくための振る舞い方を実行させることが重要になる。
管理職は決して部下に対して「みなと同じことやる」という態度を求めてはならないし、そのような指導をしてはならない。仮にこのような指導を展開したならば、均一化したロボットを再生産するようなもので、育成とは無縁になる。
管理職が部下一人ひとり心身を掌握するということは、とりもなおさず部下一人ひとりに「それぞれが果たすべき役割」を自覚させて、動かしていく働きかけである。
この働きかけは管理職にとって労力のかかることである。しかし、こうした働きかけが管理職としての「コミュニケーション能力」向上につながることを忘れてはならない。
もちろん「役割」は不変ではなく、会社の環境や部下の置かれている立場とともに変化していため、常に状況対応しながら常に新しい役割を与え続ける必要がある。その継続が、部下一人ひとりの役割に対する責任感をも生み出してくる。
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